登 山 用 語 集

 

【あ】

 

アクセス:登山口までの入山方法や交通機関など

亜高山帯:高山帯の下部に位置する気候帯。多くはシラビソやコメツガなど針葉樹林の森になっている。

頭(あたま):谷の源頭部のピーク。屏風の頭など。

アプローチ:登山口や岩壁の取り付きまでの行程のこと。

アルファ米:水又はお湯を注ぐだけで食べられる状態のお米。最近では被災時用非常食としても利用されている。

鞍部:稜線上で、少し低くなっている場所。コルともいう。馬具である鞍のようになっていることから名がついた。

石車に乗る:斜面を歩行中、直径1p程度の小石を踏むことにより、足の下で小石が転がって足を取られる危険な状態。

一本立てる:登山中に休憩すること。その昔、強力が休憩する際に荷物の下に杖を立てて休んだことが語源になっている。

右岸、左岸:谷の上流から下流に向かって右側が右岸。山を登っているときは左右が逆になる。また、右俣・左俣は、下流から上流を見て右が右俣となる。

浮き石:地面に固定されていない不安定な石。足場にするような大きなものは、乗ったときにバランスを崩しやすい。小さなものでも落石になりやすく危険。

雲海:高所から眺めたときに、山腹から下が一面の雲でおおわれ、あたかも大海原が広がっているかのように見える状態。

エスケープルート:縦走の途中ですみやかに下山できる道。また、天候の急変などによって計画のルートを避けたり、危険箇所を回避するために利用される道。

エビの尻尾:強風によってでき、木や岩などに付着した氷や雪。エビの尻尾のような形をしている。

エマージェンシーシート:保温効果の高いアルミ素材を利用したシート。緊急時にくるまったりして使う。

オーバーハング:垂直以上の傾きがあるような岩壁のこと。

お花摘み:主に女性がトイレに行くこと。男性は「キジうち」という。

 

 

【か】

 

カール:氷河の浸食により、深いくぼみを描いた山腹の地形。圏谷ともいう。涸沢カールなど。

ガス:霧のこと。山の下から見ると雲。「ガスが出る。」「ガスに巻かれる」などと使

用する。

:山頂より一段低いところにある平坦地。槍の肩など。

カラビナ:岩登り用の登攀器具。金属性の小型の輪で、ロープなどを繋ぐ。

空身:バックパックなどの荷物を持たないこと。頂上直下の山小屋から、空身で頂上往復、などと用いられる。

ガレ:大小の岩石が大量に斜面を埋めていたり、岩の間を砂礫が埋めている場所。

涸れ沢:沢の上流部で流れが岩や河原の下をくぐったりして沢水が流れていない部分。

観天望気:空を眺め、雲の形や動き、風向、空気の寒暖などから天気を予報すること。

岩頭:岩稜の小ピークで頭のように大きなかたまりの岩からなる所。

岩稜:急峻な岩尾根。

キジうち:山での排泄行為を指す隠語。女性の場合は「お花摘み」という。「大キジ」「小キジ」「空キジ」などともいう。

キレット(切戸):連なる稜線が、コルと呼ぶにはあまりにも急峻に切れ込んでいるところ。

草付き:崩壊他や雪崩跡に見られる草の生えた斜面。数p〜1m程度の丈の低い草におおわれ、濡れているときはとくに滑りやすい。

クサリ場:一般登山道の急斜面の岩場などに、登攀時の安全確保のためのクサリが取り付けられていることがある。

軽アイゼン:アイゼンのなかでも爪が4〜6本のもので、おもに夏山の雪渓用か冬の低山で使用される。

経年劣化:使用頻度にかかわらず、年月とともに強度が劣化するこ。登山靴のソールの離など。

携帯トイレ:排泄物を持ち帰るための小型容器。山でのし尿処理問題を解決するためにも各自持ち歩きたい。

けもの道:山にすむシカやイノシシなどの動物が使う自然にできた踏み跡。

ケルン:石塚、石の道しるべ。円錐形に石を積み上げて作る。ケルンが立てられる場所には枝道の分岐点、森林限界以上の岩礫斜面、川の徒渉点などがある。

源頭:沢の源流で、沢水なくなる所。

ゴア:ゴアタックスの略称

高山植物:森林限界を越えた高山帯に生える植物の総称。

高山病:高度の影響によって人体に起こるさまざまな症状の総称。食欲不振、吐き気、頭痛など。

行動食:山登りの行動中に摂る食物。休憩ごとに少しずつ口に入れる。

広葉樹林:ブナやカエデなど平たい葉を持つ木々の林。落葉広葉樹の森林では新緑や紅葉の美しいところが多い。

コースタイム:登山コースの標準的な所要時間。

コッヘル:コンパクトにまとめられる小型鍋のセット。

コル:ピークとピークの間の低いところ。鞍部、タルミ、タワなどさまざまな呼び名がある。

コンパス:磁石のこと。

 

 

【さ】

 

ザックカバー:ザックにかける雨よけのこと。完全防水ではない。

サブコース:本コースに対する副コース。天候や体調の変化を見て臨機応変に対応するため事前に考えておく必要がある。

サポートウェア:機能性タイツに代表される、体のスムーズな動きをサポートする役割をもつウェアのこと。

ザレ:粒の細かい砂礫地。

砂礫:礫は粒径2ミリ以上の小石。それより小さいものが砂。

三角点:国土地理院が行う基本測量によって位置が求められた基準点で、標石が置かれている。三角点間の間隔が広いものから一等から四等の種類がある。

残雪期:登山シーズンのひとつ。日本の高山の1年は、残雪期、無雪期、冬期(厳冬期)に分けられる。

山座同定:実際の風景や写真を見ながら、山の名前を確定すること。

三点支持:岩場通過の基本技術のひとつ。両手両足の四点のうち、三点を確保し、残り一点だけを動かすこと。三点確保とも。

シェル:アウターウェアとほぼ同義。伸縮性のあるソフトシェル、伸縮性のないハードシェル。

縦走:稜線づたいに複数のピークをたどっていく登山形態。

シュラフ:寝袋。スリーピングバッグともいう。中綿の種類には、ダウン(羽毛)と化繊がある。

主稜線:稜線のなかでも、山群の背骨というべき主要な山稜。

支稜:枝尾根のこと。

森林限界:森を形成する高木の生存可能な高度の限界。日本の中部山岳地帯では標高2500mほど。

ストーブ:炊事などに使われる火器のこと。コンロ、バーナーともいう。

ストック:歩行補助用の杖。ひざや腰の負担を軽減し、推進力をつけバランスをとるのに役立つ。ストックを突いた穴が登山道を荒らすこともある。

スパッツ:靴内部への雪や砂利などの侵入を防ぐための用具。靴全体をおおうタイプや足首部分をおおうタイプがある。

雪渓:降雪や雪崩などで谷を埋めた雪が遅くまで残っている状態。稜線上などに残っている場合は、雪田という。日本三大雪渓と呼ばれるのは、白馬岳の大雪渓、針ノ木岳の針ノ木雪渓、剣岳の剣沢雪渓。

双耳峰:顕著な頂上を二つ持った山。谷川岳のトマの耳、オキの耳や鹿島槍ケ岳など。

 

 

【た】

 

体感温度:温度計で測定される気温とは別で、体に直接感じる温度のこと。体が濡れていたり、強風が吹くことで下がり、風速1mにつき体感温度は約1度下がる。

脱水症:汗のかき過ぎや水分摂取が足りないために、体内の水分が少なくなってしまう症状。足がつったり、脱力感などの症状がでることもある。脳梗塞の原因にもなる。

地形図:国土地理院発行の1/25,000或いは1/50,000の地形図のこと。ガイドマップのようにコースタイムなどの記載はないが、等高線などから地形を読むのに適している。

直登:斜面をまっすぐに登ること。

池塘:高層湿原にある小さな池。なんらかの理由によって、湿原の中に植物が生育できない場所が生まれ、そこが湿原の発達から取り残されてできる。数多くの水生生物が成育している。

ツェルト:緊急用の小型軽量テント。テントと違い床面が縫い合わされていないので、被ったり、広げたりと状況に応じた使い方ができる。

つづら折り:山腹の急斜面をジグザグにたどる坂道。

吊尾根:近接した二つの頂上を結ぶ稜線が、吊り橋を架けたように弧を描くところ。鹿島槍ケ岳の南峰と北峰を結ぶ尾根など。

出合:二つの沢が合流するところ。また、登山道から目的の沢に入る地点のこと。

停滞:悪天候などのために行動できず、その場(山小屋やキャンプ地)に留まること。沈殿ともいう。

ディパック:日帰りハイキングに使うような小型のザックのこと。

鉄砲水:急激に増水した雨水が土砂などをともなって川や沢を激しく流れ下るもの。集中豪雨や台風、夕立などによっても起こる。

デポ:冬季登山のときなど食料や装備をあらかじめ登山ルート上にキープしておくこと。また、山頂の往復など短い距離を行き来するときに、荷物を残置する場合にも用いられる。

テルモス:携行できる金属製魔法瓶のこと。もともとはドイツのメーカー名から。

テン場:キャンプをするためにテントなどを設営する場所。テント場、キャンプ場、幕営地ともいう。

ドーム:先が丸い巨大な岩峰。

:登山道が尾根を越えるところで、多くの場合鞍部である。

透湿性防水素材:水は内側に通さず、内側からの水蒸気は外に逃がすような構造になっている素材。ゴアテックスなど。

道標:登山口やルート上の分岐などにある案内標。

登山届:登山計画書。登山の行動予定、メンバーの住所や緊急連絡先などを記入して、地元警察などに提出したり、家族に渡しておく。

徒渉:水流を徒歩で対岸に渡ること。飛び石で渡れる場所もあれば、ひざから腰くらいまで水に浸かることもある。

トラバース:山腹を横切ること。山頂を通過せずに山腹を巻く場合などに使われる。

トレイル:雪面や岩礫帯、ヤブなどにつけられた踏み跡。トレースもほぼ同じ意味に使われる。また、登山道をトレイルと呼ぶこともある。

トレッキング:本来は海外の山岳地帯で行われる比較的長期間の徒歩旅行のこと。登頂を目的とせず、歩くことそのものを楽しむのが特徴。最近は国内での山麓周遊ハイキングなどを含む。

 

 

【な】

 

ナイフエッジ:ナイフの刃のように鋭く切り立った岩や雪の稜線。

二重山稜:二つの稜線がほぼ並行している地形。山地の隆起や残雪による崩壊などが原因といわれる。蝶ケ岳などで見られる。

熱中症:体温が著しく上昇し(40度以上)、通常の身体反応で体温調節ができなくなる重度の高体温疾患。死亡する恐れが高い。軽度なものは熱けいれん、中等度のものは熱疲労という。夏場の登山では服装の着脱による体温調節、水分補給などを心がける必要がある。

乗越:尾根を乗り越えるところ。道がある(あった)場合は峠と呼び、乗越は道の有無は問わない。

 

 

【は】

 

ハイドレーションシステム:歩きながら水を飲めるようにしたシステム。バックパック内に収納した水痘からチューブがのびている。

パッキング:荷物をバックパックに詰めること。

バックパック:登山で使われる背負い袋。いわゆるザックのこと。

ばてる:非常に疲れて動けなくなること。空腹で体に力が入らなくなることを「シャリばて」という。

バノラマ:さえぎるもののない広大な眺め。

バリエーションルート:整備された一般登山道以外のルート。通常は一般道より困難で、クライミングや沢登りなどの対象となる。

ピークハント:山頂に登ることを目的とした登山のこと。登頂を最優先する登山者をピークハンターと呼ぶ。

膝が笑う:下り道が長く続いたときに、足の筋肉が疲労し、力が入らなくなる状態。膝がガクガクする。長時間「膝が笑う」状態を続けると、膝の関節を傷つけることがある。

非常食:遭難などの非常事態に備えて携帯しておく食料。軽量で高カロリー、かつ火や水を必要としないものが望ましい。

ピストン:同一コースから山頂などを往復すること。本来の意味は同一行程を休みなく往復すること。

非対称山稜:一方が急な斜面で、反対側が緩やかな斜面になっている山の稜線。後立山連峰が特徴的。

避難小屋:本来は天候急変時などにおける一時的な避難施設。たいていは無人だが、シーズン中のみ管理人が常駐するところもある。また、緊急時のみの利用に限られる小屋もある。

ビバーク:露営の意味で、宿泊施設を利用しないで一夜を明かすこと。予期せぬ事態でやむなく行うこ場合を指すことが多い。

氷河:夏でもとけずに越年した雪が、自分の重さで圧縮して固まり氷となって低い方へと流れ下るもの。日本に氷河はないが、かつて氷河が存在したことを示す氷河地形が日本アルプスや日高山脈に残っている。

疲労凍死:疲労と寒さで体力を消耗し、凍死してしまうこと。真夏でも台風などの悪天候下での行動や、無理な長時間行動によって、疲労凍死にいたることがある。

ピンチバッグ:エマージェンシーバッグ、ピンチセットともいう。非常食、医療用具、火をおこすための燃料など、緊急事態に備えて持っておきたいものをひとまとめにしたセット。

ファーストエイド:応急処置のこと。常備薬や外傷薬などをまとめたセットを常備し、かつ山でできる応急処置の知識や技術も身につけておきたい。

武器:山で食事に使う箸やスプーンなどの総称。

踏み跡:人や動物が通ることによってついた跡。非常に不明瞭なものから、登山道と間違えるほどはっきりしたものまである。

プロッケン:山で太陽の斜光線を背に受けたとき、正面の霧や雲に自分の姿が映し出される現象。

フリーズドライ:冷凍乾燥させて製造された食品。軽量で保存性があり、栄養素も素材のまま保持されている。お湯や水でもどして食べる。

分水嶺:山頂や稜線が、水系を分ける境界となっているところ。

ヘッデン:ヘッドランプの俗称。

歩荷(ぼっか):歩いて荷物を運ぶ人のこと。また、重い荷物を背負うこと。

ポンチョ:頭から被り、上半身をおおう雨具。風に弱く、山の稜線では使いにくいため一般的ではない。しかし、蒸れにくく、ザックまでカバーできる利点もある。

 

 

【ま】

 

巻く:通過困難な場所やピークを迂回すること。迂回路を巻き道と呼ぶ。

:急峻に切れ込む稜線。キレットの富山県側の呼び名。大窓。小窓、三ノ窓など。

水場:登山コース中にある水の補給地。残雪や湧き水などがある。季節によって涸れることもあるので注意。

胸突き八丁:急峻な登りのこと。一般に、頂上や峠近くのコースの終盤に現れる急坂をさす。

木道:湿原やお花畑などの植生保護のために敷かれた木の歩道。

モルゲンロート:山々が朝の陽光で赤く染まること。夕日に染まることをアーベントロートという。

モレーン:氷河により運ばれた岩石が堆積した地形。アルプスやヒマラヤ、日本では槍沢などで見られる。

 

 

【や】

 

やせ尾根:両側が鋭く切れ落ちた細い尾根。登山コースによっては、馬の背、刃渡りなどと呼ばれる。

ヤブこぎ:ヤブをかき分けながら進むこと。タケ、ササ、灌木などヤブの種類はさまざま。一般登山道であっても刈り払いのないコースでは、ヤブこぎを強いられることもある。

山屋:登山愛好家、登山マニアなどのこと。沢登り愛好家を「沢屋」、岩登り愛好家を「岩屋」ということもある。

雪形:雪解けの時期に残雪の形や地肌の文様が、人や馬などなんらかの形に見えること。

予備日:登山日程に余裕を持たせるために、計画に組み込んでおく日。悪天候時に停滞をする場合なとに使用する。

 

 

【ら】

 

落石:上から落ちてくる石。自然落石と人為落石がある。落石を起こしたり、落ちてくるのを見かけたら「ラクッ!」と叫んで周囲の人に知らせる。

リッジ:尾根や山稜のこと。

稜線:峰と峰とを結ぶ尾根の連なり。山稜の中でも特に山の最高点を結んだ線。

リングワンデルング:視界が悪い場所で道に迷い、歩いているうちにいつのまにか元の場所に戻ってきてしまうこと。霧や降雪、夜間行動などのときや、地形的な特徴がない場所で起こりやすい。

林道:車が通ることの出来る、広い山道。林業作業用の道や普通車が通れる道をいう。路面の未舗装、舗装は問わない。

ルートファインディング:自分が進む正しい道や方向を見つけること。

レイヤード:重ね着。ベース(アンダーウェアなど)、ミッド(フリースなど)、アウター(透湿性防水素材ウェアなど)に大別される。

ローインパクト:自然の中での活動で環境に与える影響を最小限度にとどめて行動することやその考え方。

露岩:地上に露出している岩石。

 

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